伯父が税理士で会計事務所を開いており、自分が大学生の時、就職を考え始めたタイミングで一緒にやらないかと勧められたのがスタートです。最初は仕事中心だったのですが、3年ほど経った頃に「よし税理士になろう」という気持ちで受験勉強を開始しました。その後、簿記論・財務諸表論・法人税法・消費税法と4科目までは合格し、固定資産税の勉強を始めました。ただそのままずっと合格せず、住民税をプラスして2科目、来年は受かるぞという気持ちで毎年毎年受験していました。受験予備校の模擬試験では当然上位なんです。なのに落ち続ける。最終的には「自分の字が悪いのか」と考えて、小学校の書き方の勉強までしました。
そんな中、妻に「こういうものがあるからどう?」と大学院への進学を提案されました。12月の合格発表で落ちてから、大学院入試まであまり期間がなかったこともあり、すぐに決断しました。今から考えれば、もっと早く決断しておけば良かったですね。いつ合格できるかわからないのが非常に苦しかったです。私の意地だけで、もうこれ以上受験を続けてはいられないという気持ちもありました。
当時、入学前学修という企画で、入学前の3月に、今でいう「ITリテラシー」を受講できる制度がありまして、私も参加しました。これまで税理士試験の受験講座だけに染まっていたので、無意識に「授業というのは全て手取り足取り教えてもらえるもの」という感覚に転換していたんですね。この入学前学修ではいろいろ課題が出たのですが、それが結構厳しくて(笑)「大学院では自分自身がやらないとダメなんだ」ということを痛感しました。真剣に勉強している方々とそこで出会ったこともあり、4月入学後はスムーズに大学院生活に入っていけました。これまでも受験勉強はずっとしていたので、勉強時間の確保という点については、大学院に入った後もあまり苦労はしませんでした。
今までお客様からの相談で迷った時には手軽に解説本なんかを見て、今から思えば、分かった気になって答えていたな、と思います。それが入学後、税法の先生方は皆、条文をひいて「これはこういうことなんだ」とお話されていて。今では、解説本を見る前に、とにかく原典である条文にあたって、その上で物事を考えるようになりましたね。会計領域では、とにかく受験に必要な簿記論と財務諸表論しかやったことがなかったですから、管理会計の分野は新しいことばかりで・・・。難しかったですが、非常に楽しかったです。お客様にコンサルをする時に役立つ知識になりました。
修士論文のテーマは、自分自身が日頃お客様から相談を受けることの多かった役員退職金を選びました。主査の先生は、学生の意志と考えを中心に指導して下さる先生だったので、とにかく自分自身で徹底的に調べて、先生に疑問をぶつけていきながら進めました。仕事で忙しくて時間がとれない時期、逆に時間がとりやすい時期というのが初めから見通せていましたので、やれる時にとにかく進めておこう、という気持ちでした。なので、自分の中での完成まではたどり着くのが早かったです。構成指導、ライティング指導の先生には、最後まで丁寧に添削いただきました。
修士論文に取り組んだことで、お客様に手紙やメールを書く時、「てにをは」をかなり気にするようになりました。身近なエピソードでは、娘が持って帰ってくるプリントで、校長先生の文章を読んだ時、ああ素晴らしいと。すごく読みやすいんですね。さすが校長先生だな、と。今まではそんなこと全く感じなかったですから。論文を書いたからこそ感じることなんでしょうね。とにかく文章に敏感になりました。
同期の仲間とは今でも繋がっていて、実務的なことでわからないことがあると相談しあっています。皆、強みが違うので「こういう方がいるんだけどお願いできない?」などお客様の紹介を受けることも。先日、税理士登録の証票の授与式に参加したのですが、なんと隣に同期が座っていました。登録番号が隣だなんてすごい縁ですよね。他にも出席していた同期がいて、終わった後、皆でご飯を食べに行きましたよ。この年齢になってから一生続くつながりができるなんて非常に貴重なことだと思っています。
私自身が税理士試験受験にこだわっていたほうなので、同じ考えの方は多いと思うのですが、とにかく早く資格をとって先に進んだほうがいいよ、とアドバイスしたいです。受験にこだわる必要は全くないと思いますね。
実は修了してからも、大学院の授業の1つを聴講しています。在学中は余裕がなくて履修できなかった科目を修了後に受けることで、また新鮮な発見があります。とても刺激を受け勉強になっていますね。今年度のシラバスを見たら他にも聴講したい科目が出てきたので、自分自身の強みにできる知識をこれからも身につけていきたいです。
伯父の事務所を引き継いで開業したところですが、これからの方向性として「創業支援」に力を入れていきたいと考えています。創業のための融資や補助金、設立自体の手続含めて、お世話になっている司法書士の先生とも連携しながら、ワンストップで創業支援に対応したい。若い方や、チャレンジしようという方と一緒に、自分自身も成長していきたいですね。